世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし。
古典の教科書で知った在原業平の歌は、桜の素晴らしさに惹かれる人の心を詠んだものですが、毎年、この季節が来るたびに「なるほど」と共感させられます。
そんな気持ちが抑えられず、桜を求めて東京の水辺をなぞってみました。
2019年、東京都心では平年より早い3月21日に開花が発表されたこともあり、出かけた4月上旬はすでに桜のピークを過ぎていましたが、散りゆく美しさも桜のよさ。
まずは、浅草駅から徒歩5分と便もよく、行き交う舟やスカイツリーと一緒に桜を眺めることができる墨田公園へ。
満開の時期を逃したとはいえ、「桜まつり」開催期間中ということもあり、花も人も十分すぎる賑わいです。
墨田公園は隅田川を挟んで両岸で桜が楽しめます。
言問橋を渡ってスカイツリー側を散策すると、水門付近など静かな場所でも桜に出会うことができます。
舟に乗っている人があまりにも楽しそうなので、東京水辺ラインの水上バスで浜離宮まで移動しながら桜を探すことにしました。
墨田区役所前の発着所から乗船するときは、区役所内の観光案内所でチケットを購入します。
浜離宮で下船する場合、発着所が敷地内にあるため運賃の620円と入園料240円を一緒に支払いますが、浜離宮の通常入園料は300円だから少しお得なんですよ。
岸を離れて水上から見る桜は非日常的で、いつもと違う雰囲気を味わわせてくれます。
浜離宮までは50分ほどの船旅ですが、散歩気分の桜見物にはちょうどいい長さです。
浜離宮の桜も見頃は過ぎていたものの、開発が進む都心の水辺の春を大勢の観光客が楽しんでいました。
東京の水辺の桜といえば、人気スポットとして必ず名前が挙がる目黒川も気になるところ。
目黒・池尻大橋エリアも魅力ですが、穴場として知られる大崎方面へ足を延ばすことにしました。
浜離宮から大崎までは山手線を利用して30分ほどと移動時間も短く、駅から目黒川まで近いことも魅力です。
このエリアは河口が近いこともあって川幅が広く、景色もゆったりとした印象。
どこまで歩いても終わらない桜並木に癒されます。
五反田駅の近くでは、新しい船着場が建設されていました。
こんなに便利な場所からクルーズが楽しめたら最高ですね。
季節が終わる前にたっぷり桜を眺められてよかった…と思いましたが、どうしても夜桜を見たくなってしまい、スタートした墨田公園まで戻ることに。
同じ場所とは思えないほど昼と夜では印象が異なり、新鮮な感動がありました。
東京の水辺で桜を探した半日旅があまりにも楽しかったせいか、もう来年の春が気になっています。
のどかな春に桜が咲く日を心待ちにし、いつ散るのかと落ち着かない…。
そんな気分が、やはりあの歌を思い出させます。
世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし。