~簡易船着場をつかった水辺散歩~
江戸時代初期、東京を流れる川には多くの「渡し場」が作られ、渡し舟は対岸への移動や流通の手段として町民の暮らしを支え、江戸の町の発展にも大きく寄与しました。
時代が流れ、橋の整備が進むと共に長く親しまれてきた渡し舟は交通機関としての需要を減らし、現在は限られた場所でしか姿を見なくなりましたが、そんな情緒のある昔の風景を思い浮かべながら“渡し舟”気分で水辺を移動する舟旅が、いま注目を集めています。

(東京ウォータータクシー https://water-taxi.tokyo/)
パーソナルボート感覚でウォーターフロントを移動する便や定期便、周遊ツアーなど多様なプランが用意されている東京ウォータータクシーは、“好きなときに、好きなところへ”行きたい船旅にはうってつけ。
場所と場所、人と人を結ぶ舟運施設として2019年にオープンした「Hi-NODE(ハイノー
出発してすぐ目に入る晴海エリアの「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」は、国際的スポーツイベントの選手用宿泊施設として2019年に建設された国内最大級のマンション群ですが、現在は1万人以上が暮らす街としての完成に向け整備が進められています。
隣接する晴海客船ターミナルは2022年2月に最後の営業を終え、1991年の開業から30年以上、東京の水辺のランドマークとして親しまれてきたシンボリックな三角屋根の施設は解体されることが決定しました。
少し寂しい気持ちと新たに建設される施設への期待。両方を同時に感じながらこの景色を眺められるのは、わずかな期間になるかもしれません。

浜離宮恩師庭園を眺めながら隅田川を遡り、2018年に完成した新しい築地大橋をくぐると左手に見えてくるのが築地市場の跡地です。
豊洲市場が開場し主要な機能を移した2018年まで、83年に渡り中央卸売市場として営業を続けた築地市場ですが、現在も解体工事が進められており、東京の水辺で最も変化が大きい景色のひとつともいえる場所。卸売りの役割を終えた今も小売・飲食店が並ぶ「築地場外市場」は営業しており観光&グルメの人気スポットとなっているので、陸に上がって散歩することにします。

河口から2本目の勝鬨(かちどき)橋のたもとには、舟から乗り降りするための簡易的な船着場が設置されており、東京ウォータータクシーのような小型船舶であれば自由に乗降することができます。
簡易船着場は自己で安全に配慮しての利用となりますが、築地場外市場までは歩いて5分とかからない絶好の立地。さらに銀座も徒歩圏内ですから、この便利な施設を利用しない手はありません。

隅田川には、こうして乗降できる簡易船着場や防災船着場が10カ所あり、浅草や両国など観光スポットにアクセスしやすい船着場もあるので、気軽に舟旅を楽しむことができます。
(東京都建設局 隅田川簡易船着場
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/kanri/sumidagawakanifunatsukiba/index.html)
今回訪れた勝鬨橋は、かつて「渡し場」があった場所でもあり、「かちどき 橋の資料館」の前に設置されている案内板でその歴史を知ることができます。
築地には新しい船着場の整備も計画されているそうなので、今後は街と水辺がますます近くなり、舟旅が楽しみやすくなりそうです。